<CAPOTE SUITE>より「From Noon to Moon」1979年



1979年、物語をテーマにして銅版画を制作したいと思った。そこでトルーマン・カポーティの小説「遠い声、遠い部屋」「夜の樹」「ミリアム」「冷血」「ティファニーで朝食を」を読んで24点の作品をつくり、うち10点は「CAPOTE SUITE」として40部のポートフォリオにした。
この展覧会は、1988年に再びカポーティ作品をテーマに作品をつくるきっかけになった。それは現在も刷数を重ねている「おじいさんの思い出」「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」(文藝春秋)の本の仕事だった。

村上春樹さんが訳したこの本は、カポーティの少年時代がテーマになっている。クリスマス三部作だ。ラッキーな編集者との出会いだった。このことが、私を憧れの出版の世界での「Book work」に結びつけてくれた。

さて、今回は「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」というドキュメンタリー映画の公開に合わせて、1979年の銅版画「From noon to moon」がパンフレットに使われている。銅版画にまつわる、なんという幸福な出来事なのだろう。

 

山本容子

 


「カポーティとの対話(1988年 文藝春秋)」の表紙になった作品が、Bunkamuraル・シネマのロビーに展示されています。





「カポーティとの対話」
ローレンス・グローベル著
出版:文藝春秋 1988年出版





『遠い声 遠い部屋』という小説を読み、「From Noon to Moon」という版画を描いた。
疾走するトラックを運転するカポーティ。そのトラックの荷台には「恐るべき子供」としてデビューした
若き肖像を載せてみた。土埃のまい上る道の質感はリアル。だから彼の無垢なる魂の存在が際立つように思った。
「真昼の街(ヌーンシティ)から月(ムーン)への旅」彼の孤独が沁み込んだ映画を観て、また本が読みたくなった。
(「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」劇場パンフレットより)