TITLE:【Others】「谷川俊太郎のあれやこれや」
魅力全開谷川ワールド
谷川俊太郎さんの没後はじめての本が出版されました。
「谷川俊太郎のあれやこれや」谷川俊太郎作(筑摩書房)
谷川さんは生きていると錯覚します。なので、カバーの絵は谷川さんのポートレートをデッサンしてみました。どれも谷川さん似です。1人だけ宇宙から参加したC3-POがいます。
山本容子
刈谷政則さん編集の自伝風の読む年譜付。
魅力全開谷川ワールド
谷川俊太郎さんの没後はじめての本が出版されました。
「谷川俊太郎のあれやこれや」谷川俊太郎作(筑摩書房)
谷川さんは生きていると錯覚します。なので、カバーの絵は谷川さんのポートレートをデッサンしてみました。どれも谷川さん似です。1人だけ宇宙から参加したC3-POがいます。
山本容子
刈谷政則さん編集の自伝風の読む年譜付。
コラム
「白雪姫」の絵本
「白雪姫」を絵本にするのは難しかった。なぜなら、読みはじめたとたん“七人の小人”は「ハイホー、ハイホー」と頭の中を歌いながら行進する。あの小太りの愛らしい姿で。「鏡よ鏡。世界で一番美しいのは、だあれ?」と鏡をのぞきこむ“まま母”の強烈な顔。物語はすでに子供の頃に獲得したイメージで一杯になっていたのだ。追い出さなくてはいけない。その方法を思いつく。それは、思い出せない登場人物を探すこと。結果、重要な役割なのにイメージ出来ないのは“かりうど”だった。“まま母”の命令に背き、“白雪姫”を助けた恩人。正義感の強い男。まずは彼の顔を描いてみよう。 この時期、私はチェコの旅から帰国したばかりだった。旅の目的は、カレル・チャペックの家(現在は博物館)を訪ねること。彼は作家であり、ジャーナリストで園芸を好み、戦争を憎んだ人。民衆新聞の各欄に、コラム、随筆、寓話と文体を変えながら記事を担当し、ペンでファシズムに対抗しようとしたヒューマニスト。著書「コラムの闘争」を読んだ私は、ウィットにあふれ、ユーモアに包まれた文章に心を奪われていた。本の最後の「ごあいさつ」というコラムの、国は違ってもあいさつをする相手をイメージすることが出来れば、戦争は食い止めることが出来る。というメッセージは強い。優しくて強い人、カレル・チャペックを“かりうど”にしようと思いついた。顔は、画家の兄ヨゼフ・チャペックのキュービズムの作品にしてみよう。
こうして誕生した“かりうど”を物語の真中に置くと、彼に命令する“まま母”が生まれ、“白雪姫”を助ける“七人の小人”が、ギクシャクと画面に登場したのだった。
お城も家具も衣装も、チェコキュービズムのスタイルにした「白雪姫」はこのようにして誕生した。
山本容子
「白雪姫とかりうど」1992年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 20×21.5cm
コラム
アリスの世界の不思議
「アリスの世界」は、つぶやきでできています。アリスはつぶやきながら、世界をグニャリと歪めていく「現在進行形」のところが好きです。たとえば物語の冒頭、時計を持ったウサギを追いかけて、ウサギ穴にゆっくり(「ゆっくり」の上に強調の点4つ)と落ちてゆくアリスは、飼い猫のダイナにエサをあげてこなかったことに気づきます。洞窟には、ダイナのエサになるものはない。はずですが、アリスは洞窟にはコウモリが居ることを思い出し、コウモリはネズミに似ているので、ネコはコウモリを食べるかもしれない。と発想を飛ばすのです、この自分勝手に論点をずらし安心してゆく過程がつぶやきの面白さなのです。もうひとつ、アリスがズンズン大きく姿を変え、訪問した家が破裂しそうになり、エントツからトカゲのビルを弾き出してしまうシーンがありますが、ビルは結局地面にたたきつけられ失神してしまいます。「トカゲの失神シーン」は、描くにはもっとも難しかったのですが、失神した顔が描けた時、私もやったとつぶやきました。ビルの失神シーンさがしてね。
山本容子
「The poor little Lizard, Bill」2008年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 28×39.5cm
コラム
世界文学の玉手箱
ふと子供だったことを思い出すことがある。
昨年の11月13日に詩人谷川俊太郎さんが亡くなった。「あのひとが来て」という詩画集を作っていた頃を思い出し、彼の初詩集「二十億光年の孤独」を手に取る。この中から二篇の詩を選び絵を描いたのだった。ページをめくる。89ページ「ネロー愛された小さな犬に」の三遍を読み、手が止まった。
いつの間にか、ネロという犬が、ネロという少年に姿を変え、犬のパトラッシュが姿を見せた。心の冷たい世の中で貧しく生きる姿。雪の中の石畳の冷たさ。教会の中の大きな絵。雪の降りしきるクリスマスに、少年と犬が冷たくなっていた光景ーそのすべての冷たさを感じ取った私は、はじめて本を読みながら大きな声を出して泣いた。その本は「フランダースの犬」だった。
子供の頃に出会った物語は、いつもどこかにひょいと顔を出し、感情を揺さぶる。
山本容子
「にんじん Peil de carotte」1994年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 15×10cm
「ピノッキオの冒険 Le adventure di Pinocchio」1994年、ソフトグランド・エッチング、手彩色 15×10cm
2025年が明けました。おめでとうございます。
今年は、京都市立芸大で銅版画を学び1975年6月に初個展をして50年になります。
バンドエイド、両刃のカミソリ、消しゴム、おろし金などを描いた画面の大きな銅版画シリーズを発表しました。
45cm×60cm厚さ1mmの銅版を手にして、描くこと。
それから製版をして刷り上げることが嬉しく、楽しかったことを思い出します。
今年もたくさんの人々のお世話になり、展覧会が全国各地で開催予定です。
告知はここに記します。是非ご覧下さい。会えたら声をかけて下さい。
よろしくおねがいします。
初日の出 那須のアトリエにて 山本容子
遠くが吹雪いていて大気が少し紫がかっていて好み
雪の中ペコリと頭を下げるLuca 今年もよろしく
先祖との 積もる話や 節作り
今年は蓮根がよくできました。
昨日ひとりでブラブラ。
木下佳通代展を見に行きました。ら。びっくり。
埼玉県立近代美術館の常設展示室の企画展で私の1975年作、papa’s and mama’s を発見しました!
2025年3月2日まで展示されます。
木下さんには京都時代可愛がってもらいました。
大学の先輩で没後30年!
なのですが、ビデオカメラのなかでは変わらず低音を響かせて話してくれています。
呼びかけられないのが残念でした。
今もフレッシュに輝く平面作品と対話してください。
山本容子
■展覧会情報
【没後30年、木下佳通代展】
2024年10月12日〜2025年1月13日
【企画展 戦後日本美術の開拓者たち 関西の作家を中心に】
2024年11月30日~2025年3月2日
早稲田でのギャラリートーク、無事終了しました!
写真は、哀しいカフェのバラードについて、制作秘話を語っているところです。
【山本容子版画展 「世界の文学と出会う〜カポーティから村上春樹まで】のインタビュー記事を「Mediall」にご掲載いただきました。
六月は読書の月かもしれない。雨の日が多く、静かに落ち着いた花が咲く。
菖蒲、紫陽花の青や紫色が雨に似合う。雨にとじこめられた部屋の窓を少し開けると土の匂いがするのもいい。子供の頃からの変わらないカオリにほっとして雨読する。
「読んでばっか」は江國香織さんの新刊。
−そばに本があることの幸せと、本を読む喜びにあふれた、心躍るエッセイ集−
と本の帯の言葉は、息急き切って号外を届けてくれた。
−絵本、童話から小説・エッセイ・詩、そして海外ミステリーまで−
の読後感が綴られていて、その感動ポイントが「江國香織の作品」になっている。対談も食事も仕事も一緒にしたことのある熱心な読者として、カオリさんの言葉をもっと楽しみたい。この六月の読書に最適です。
山本容子
2024年6月10日
発行:筑摩書房
定価(本体価格1800円+税)
書籍の販売詳細ページはこちらから
★編集は刈谷政則さんです。 (「ハムレット!ハムレット!!」の編集者)