TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年8月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年10月6日のテーマは「現実と仮想、往還のマナー」恩田侑布子さんです。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年8月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年10月6日のテーマは「現実と仮想、往還のマナー」恩田侑布子さんです。
3 『キューピー人形がすきなのね。』
©️Yoko Yamamoto
いよいよ家族の登場。
私と妹は堺市大浜海岸のそばで育った。
大家族で、親戚がよく集まり、大人達に囲まれて私はともかくおしゃべりで、妹は無口だった。
まずは母方の祖父。奈良に住んでいた彼は洋行帰りのダンディーなおじいさん。
夏の麻のスーツとハット姿が似合っていた。
おばあさんとは蓄音器をかけてダンスを踊っていたと、母から聞かされていた。
2歳の頃、昼寝をしている時に、お土産のキューピー人形を小さいのから一番大きいのまで7個買ってきて、
私が目を覚ますのを待っていたエピソードは有名。
キューピー人形を抱いてねていたら、起きるとたくさんのキューピー人形に囲まれていたので
びっくりしてう〜んと気を失なったとか。
私のはじめてのビックリヒックリかえったお話。
そういえば、はじめて美術館に連れていってくれたのも彼だった。
そして、京都市立美大の門前の画材屋でスケッチブックと絵の具を買ってきてくれた。
美大への道をつけてくれたのかしら。
2 『こいぬがすきなのね。』
©️Yoko Yamamoto
白黒写真のアルバムには、堺市の大浜海岸で遊ぶ姿が、毎年貼られている。
海と砂場、ここで手に入れるモノは大切な宝物だった。
現在は埋め立てられて、海岸は遊泳場ではなくなった。
今の私は毎年、堺市の依頼で中学生のアートクラブグランプリという
アート作品の審査員としてこの場所に通っている。
この仕事が海浜工業地帯に眠っている子供の頃の記憶を思い出す機会になっているので、
巡り合わせた時間に不思議な思いを抱く。
私にはマーコという妹がいるが、
今は消えさった海の近くの南海野球場の話が出来る少ない話し相手だ。
その球場は、子犬の捨て場所でもあった。
私の遊び相手はスピッツのゴロー。生まれた時からの世話役だった。
夕方、ゴローと海から帰る時、ワンピースのすそを広げて子犬をひろって帰っては、
家族に問題を運んでいた。
絵本の絵を見ると白いスピッツのゴローは、今、横にいる、
ラブラドールのルカにそっくりで、びっくりひっくりかえった。
1 『びっくりするのが好きなのね』
©️Yoko Yamamoto
「おこちゃん」というのは、幼い私が「ようこ」という名を「よおこ」と覚えて、
自分のことを呼ぶのに「よおこ」は長いので「おこ」ちゃんと言ったことからはじまった呼び名。
だということを母から聞いた。
絵本「おこちゃん」は母との日常問答から生まれた。
合わせて白黒写真の誕生からのアルバムを繰って母に質問した。
そんなエピソードの数々を使って、子供の頃の日常を描いた。
ただし、見開きページに描く絵と言葉が一体感をもち、肉声のような体温を伝えたいと思った。
それで歌いながら読んでほしいと、言葉にリズムをもたせることにした。
だから、満3歳から習った童謡の曲を下敷きにしたのだった。
子供だった人が皆知っている曲を思い出して
「ぞうさん」(まど・みちお 作詞 / 團伊玖磨 作曲)に重ねて言葉をつむいでいった。
まずは、おこちゃんの顔の説明からはじめたのだけど、
かあさん、とうさん、そして家族の顔を思いうかべると、
皆どこか似ていて性格と共通する点の多いことに驚いて、
ファミリーを思い出すと必ず「びっくり ひっくりかえるエピソード」を書きとめていった。
ひとつひとつのエピソードはおこちゃんとファミリーの合作だ。
大家族で暮らしていた大阪堺市の海のそばの一軒家での出来事だった。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年9月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年9月15日のテーマは「電球のマナー」星野博美さんです。
15 『森の合唱』
©️Yoko Yamamoto
「チューリップ畑をつまさきで」
この言葉と音楽から発想した物語もおしまい。
森の合唱のために、久し振りにピアノの前に座り、
"Tiptoe through the tulips with me"
の楽譜を見ながら音を出してゆきました。
そしてはじめて訳詞をしました。
この絵本を閉じる前に、鼻歌を歌ってほしいと願って。
そんな少女がどこかにいると信じて。
声はこだまになって、山のむこうまでひろがってゆくことでしょう。
14 『チューリップの秘密』
©️Yoko Yamamoto
カオリとバナナは感動しました。
「森のチューリップが歩けるのは、わたしたちが砂漠を旅したチューリップの
ラーレとシンシアの子孫だったからなのね」
「王様がラーレをみて、しあわせな気持ちになったように、
たっぷりの愛をうけて元気に育ったキューコンは、
みんなの心をやさしくなぐさめられるチューリップになるんだわ」
森はもうすぐ春。
はやくかえって、チューリップがみんなの心をしあわせにできる秘密をはなしてあげなさい。
キューコンチョーがそっとあたまをおろしました。
カオリとバナナは森へ帰ることができます。
チューリップが歩けるとは植物の分布図が変化することなのですが、
悠久の時間をかけて少しずつ移動していると想像すると楽しいイメージになりました。
2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。
2020年8月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。
©Yoko Yamamoto
読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年9月1日のテーマは「やわらかな身体知のマナー」恩田侑布子さんです。
13 『チューリップと王様』
©️Yoko Yamamoto
まずは「チューリップと王様」という物語を読んでください。
絵の中ではラーレが朗読してくれたことになっています。
子供の頃、叔母のヒザに頭をのせて、絵本をしっかりと持ち
「むかし、むかし」と叔母が読んでくれる物語が大好きでした。
叔母の声はだんだん物語の中のヒトやドウブツの声になっていきました。
大好きな場面は良く覚えているのに、
何度も同じ本を座布団と共に叔母に持っていったと母から聞きました。
カオリとバナナはキューコンのときから歩けましたね。
このページでは「歩けるチューリップの秘密」と
「王様はなぜさみしい顔をしていたのか」の理由を書いています。
昔、河合隼雄さんと絵本をテーマに対談したことがありました。
河合さんは、私の描いた「おこちゃん」という絵本を持って講演をして下さったそうです。
それはなぜか。河合さんは私の子供の頃の
「ヒミツをあかすエネルギー」が大好きだったからだとおしえてくださいました。