LUCAS MUSEUM|山本容子美術館 

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TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

December 24.2020


15 『じどうしゃすきなのね


©️Yoko Yamamoto


今日はクリスマスイヴ。「真っ赤なお鼻のトナカイさん」を口ずさむ。
「真っ赤なお鼻のトナカイさんは いつも皆の笑い者」
私の鼻のテッペンには小鼻から小鼻にかけて1cm位のキズがある。
このキズは中学生位まで鼻先に色の変化をもたらした。

小学3年の時、関西から東京に転校した時、関東の冬の寒さを楽しんで霜柱観察や
足で踏んでこわす遊びをしていたら、友だちが「あっ鼻の色が変わってる。青いよ。」と言った。
それから気にして鏡をのぞくようになったのだった。

このキズは4歳の時「父が叔父に車の運転を教えている時、
近所の壁にぶつかってフロントガラスが割れてそのガラスで鼻を切った」
と、父から家族に報告された。
その時父の腕に抱かれていた私は、鼻のバンソウコウを指差しながら
「おこちゃんおはなとれちゃったの」と言ったと聞いた。
この言葉を聞いて、家族は全員青い顔になったらしい。

こうして「青い鼻とキズ」は高校生位まで心のちょっとしたキズになっていたが、
鼻がくっつく時ラッキーにも少し上向きについたのか、大人の私は、
少しツンとしたキズのある上向きの鼻が好きだ。
真っ赤なお鼻のトナカイさんの鼻も、光ることによって夜道を照らしサンタの役にたった。
ケガの功名と考える。

Category: Gallery
Posted by: lucas

TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画

December 22.2020

2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。

2020年9月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。


©Yoko Yamamoto

読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年12月22日のテーマは「こしゃくな石のマナー」星野博美さんです。

Category: Others
Posted by: lucas

TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

December 17.2020


14 『うみがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


大阪堺市の大浜の海辺は、大好きな場所。そこで遊ぶわたしたち子供の姿は、アルバムに貼られている。
水着とゴムのキャップをかぶって浮き輪を腰にまいた姿はもちろんのこと、春や秋や冬の姿まで記録されている。
ワカメや桜貝をとったり、砂の城を作ったり、想像力がバクハツしていた。そして海を見ているのも好きだった。

海は季節や時間帯で変化する。波の高さや色!
砂浜で絵を描いたこともあったけど、家の中で絵を描くのが楽しかった。
思い出しながら描くと自由になれたから。
スケッチブックにピンク色の絵具をバーッとぬって、「海だー」といったら、大人がビックリしたのも覚えている。

その海水浴場は、小学二年の時、姿を消した。
「もう海に行ってはいけません」「埋め立てをします」
そして立派な臨海工業地帯が生まれ、私は海をなくした。
遊びが出来ないという理不尽をはじめて体験した。
こうして強い大人になってゆく。

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Posted by: lucas

TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

December 10.2020


13 『テレビがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


応接間にはテレビが座っていた。
使っていない時は美しい布がかけられ、それを上げると観音開きのドアが開く。そしてテレビが出てくる。
午後になると近所の方々も少し集まってきて試合観戦となった。
相撲とレスリングの時は部屋は熱気を帯びていた。
皆テレビに向って声をかけたり、拍手をしたり、一体感がすごかった。
家族も集まるのでとても好きな時間だった。
ヒーローは若乃花と力道山。ライバルは胸毛の濃い朝汐と頭をかじるブラッシーだったかな。
この興奮した時間を過したおかげで、わたしはまたひとつ自分の芸を身につけたのだった。

力道山のユニフォームの黒いタイツをはいて、
その上から浴衣の帯にヒモを結んでもらい、若乃花のまわしを身につけた。
最強の出立ちを考えたわけだ。
当然上半身は裸んぼうなので、皆さんは笑ってくれたが、わたしがおんなの子なので、失笑だったのだと思う。
空手チョップをしながら相撲のまねをするおてんばなおんなの子の証明をした。

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TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画

December 08.2020

2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。

2020年9月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。


©Yoko Yamamoto

読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年12月8日のテーマは「亡き人と淡交のマナー」恩田侑布子さんです。

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December 03.2020


12 『さくらがいがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


砂浜を散歩していてさくらがいを見つけると、とたんに5歳のわたしがでてくる。
色も形も薄くて透明なさくらいろ。そーっと指でつまんで集めていた。
大好きだったが、わたしを殺そうとしたさくらがい。

子供の頃のおたのしみは、「不思議」に出会える手品だった。
大人は皆手品を知っていて、ゲームをしてくれた。
父は洋室にいてテーブルの上のさくらがいを見ると両手をひろげ、てのひらにひとつ、さくらがいをのせた。
さあはじまるぞ。ゲンコツをふたつつくって「どっち、どっち」といいながらさくらがいを移動させる。
にらんでみているのだが、「こっち」とえらんでも当たらないことが多くて、何度もゲームを繰り返した。
どこかに隠したにちがいないと、父のそばをさがしているうちに、
もうひとつのてのひらから「こっちだよ」とさくらがいが出てくるので頭にきた。
そして今度はわたしが手品をするといって父と同じ動作をしながら、
わたしはさくらがいの移動の時、ひょいと口の中に入れた。
口の中に隠すのがわたしのアイデアだった。

ところが、勢いよく息を吸って口にいれたさくらがいは、そのままのどにはりついた!
ゲーゲーと苦しむわたしを見て、父はヒザにわたしのおなかを当てて、ゆびを口の中につっこんだという。
さくらがいは口の中を切って血と一緒に外へ出てきた。
金魚みたいにプワーッと息を吸った時のことは忘れない。
絶対にバレない隠し場所だったのに。
手品はものすごくおこられて、そして失敗に終わった。

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TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 26.2020


11 『ハイヒールがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


ハイヒールは大人の女性のくつ。あこがれだった。
わたしは「おしゃまさん」とよばれていて、おでかけの前にヘアアイロンで髪にくるくるを作ってもらうと、
母のヘアスタイルになったようで嬉しかった。

昔は今より内と外で着るものの区別がハッキリしていたように思う。
父は外から帰ってくると着物に着替えていたし、母は外出の時、自分で仕立てた洋服を着て、ハイヒールをはいた。
合わせてバックを持つと、おでかけだ。わたしはこの支度の時間がウキウキしていて好きだった。
興奮のあまり、母のハイヒールに足を突っこんでかかとを鳴らして歩いていたらすごくおこられた。
ハイヒールは大切な靴。かかとがいたむと大変なのだ。

ハイヒールの魅力はかかとが高いということを発見した日、
わたしは庭履きの木の下駄に、くぎを打つとハイヒールになる!と思いついたのだった。
祖母が「この子はテサキがキヨウだね」と言っていたとおり、
くぎを打ち終えるとすべり台のようなハイヒールが誕生したのだった。
カタカタ、ゴトゴト音を出した下駄は、母の悲鳴と共にゴミ箱行き。
だってくぎは歩くたびに表面に出てきていたからだ。
思いつきは危険と共にあると知ったのだったが、思いつき事件は続いた。

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TITLE:【Others】読売新聞 夕刊 「たしなみ」挿画

November 24.2020

2012年4月から読売新聞夕刊の隔週火曜日に、現代の人間関係のありようや世相を考えるエッセーを集めた「たしなみ」のコーナーの挿画を制作しています。

2020年9月からの作者は星野博美さん(作家・写真家)、恩田侑布子さん(俳人)のお二人です。9年目に入った連載を引き続きお楽しみください。


©Yoko Yamamoto

読売新聞夕刊「たしなみ」挿画、2020年11月24日のテーマは「無駄話のマナー」星野博美さんです。

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Posted by: lucas

TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 19.2020


10 『おえかきがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


母方の祖父は絵画鑑賞が趣味で、展覧会によく連れていってくれた。
私の楽しみは帰り道の天丼やうなぎだったのだけど、美術館のトイレの場所はしっかり覚えた。
父はというと、子供の頃先生にこう言われたという。
「犬ならもっと犬らしく描きなさい」
父は、「本当は馬を描いたんやけど」と言っていた。

私は絵を描くのは好きだった。祖父に買ってもらったクレヨン、クレパス、水彩絵の具。
どれもみんな色がキレイだったから。
でも、絵は習いに行かなかった。
3才からはじめた童謡、日本舞踊、バレエ、ピアノ、三味線と習い事の歴史は続くが、絵画教室はスケジュールになかった。
まわりの大人の趣味の世界が多様だったので、その時々の大人にあわせて私は習い事に励んでいた。
皆絵を描くのは苦手だったのね。
この事が「緑のキリン事件」をおこしたのだった。

幼稚園の時、動物園でおえかきをしていた。
ら、私は黄色と茶色のキリンを見ながら緑のキリンを描いた。
先生に理由を聞かれて、私は堂々と「だってキリンは草を食べたから」と答えた。
そして童謡を歌ったという。それは、北原白秋の
「赤い鳥小鳥 なぜなぜ赤い。赤い実を食べた。
青い鳥小鳥 なぜなぜ青い。青い実を食べた。」
だからキリンは緑なの。とね!
この事件は、私の美術家人生のはじまりだったかもしれない。

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Posted by: lucas

TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 12.2020


9 『おせんたくが好きなのね


©️Yoko Yamamoto


作家の三島由紀夫は、母親の産道を通った時の記憶があると言っていた。それから”自分”となったのだという。
私の場合は、このシーンから”わたし”になった。

それは、庭の隅に植えられたいちじくの木の下の水道のある場所だった。
水栓の下には少し大きめの金だらいがあり、色々なものを水洗いする場所。
裁縫の好きな母は、私のパンツを可愛い布で何枚も作っていた。それは私がよくおもらしをするからだった。
おもらしをすると”おしりペンペン”をされていたので、いちじくの木のそばはおそろしい場所だったが、
おこられないようにするために自分でパンツを洗っていちじくの木に干しておく方法を考えついた。
そしておしりは気持ちよく水につけて空を見ていた。
恐怖を回避して満足感にあふれていたその時、”わたし”だと思った!
いちじくの花盛りは、わたしの記憶の第一番目のシーンだった。

洗濯機には、水をしぼるゴムのローラーがついていた。
今の私は鉄のローラーで、銅版画を刷っている。
不思議なイメージの連鎖だ。

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Posted by: lucas
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