2 『こいぬがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


白黒写真のアルバムには、堺市の大浜海岸で遊ぶ姿が、毎年貼られている。
海と砂場、ここで手に入れるモノは大切な宝物だった。
現在は埋め立てられて、海岸は遊泳場ではなくなった。
今の私は毎年、堺市の依頼で中学生のアートクラブグランプリという
アート作品の審査員としてこの場所に通っている。
この仕事が海浜工業地帯に眠っている子供の頃の記憶を思い出す機会になっているので、
巡り合わせた時間に不思議な思いを抱く。

私にはマーコという妹がいるが、
今は消えさった海の近くの南海野球場の話が出来る少ない話し相手だ。
その球場は、子犬の捨て場所でもあった。
私の遊び相手はスピッツのゴロー。生まれた時からの世話役だった。
夕方、ゴローと海から帰る時、ワンピースのすそを広げて子犬をひろって帰っては、
家族に問題を運んでいた。

絵本の絵を見ると白いスピッツのゴローは、今、横にいる、
ラブラドールのルカにそっくりで、びっくりひっくりかえった。