LUCAS MUSEUM|山本容子美術館 

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TITLE:【Gallery】Let's go to my gallery 〜おこちゃん〜

November 26.2020


11 『ハイヒールがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


ハイヒールは大人の女性のくつ。あこがれだった。
わたしは「おしゃまさん」とよばれていて、おでかけの前にヘアアイロンで髪にくるくるを作ってもらうと、
母のヘアスタイルになったようで嬉しかった。

昔は今より内と外で着るものの区別がハッキリしていたように思う。
父は外から帰ってくると着物に着替えていたし、母は外出の時、自分で仕立てた洋服を着て、ハイヒールをはいた。
合わせてバックを持つと、おでかけだ。わたしはこの支度の時間がウキウキしていて好きだった。
興奮のあまり、母のハイヒールに足を突っこんでかかとを鳴らして歩いていたらすごくおこられた。
ハイヒールは大切な靴。かかとがいたむと大変なのだ。

ハイヒールの魅力はかかとが高いということを発見した日、
わたしは庭履きの木の下駄に、くぎを打つとハイヒールになる!と思いついたのだった。
祖母が「この子はテサキがキヨウだね」と言っていたとおり、
くぎを打ち終えるとすべり台のようなハイヒールが誕生したのだった。
カタカタ、ゴトゴト音を出した下駄は、母の悲鳴と共にゴミ箱行き。
だってくぎは歩くたびに表面に出てきていたからだ。
思いつきは危険と共にあると知ったのだったが、思いつき事件は続いた。

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November 19.2020


10 『おえかきがすきなのね


©️Yoko Yamamoto


母方の祖父は絵画鑑賞が趣味で、展覧会によく連れていってくれた。
私の楽しみは帰り道の天丼やうなぎだったのだけど、美術館のトイレの場所はしっかり覚えた。
父はというと、子供の頃先生にこう言われたという。
「犬ならもっと犬らしく描きなさい」
父は、「本当は馬を描いたんやけど」と言っていた。

私は絵を描くのは好きだった。祖父に買ってもらったクレヨン、クレパス、水彩絵の具。
どれもみんな色がキレイだったから。
でも、絵は習いに行かなかった。
3才からはじめた童謡、日本舞踊、バレエ、ピアノ、三味線と習い事の歴史は続くが、絵画教室はスケジュールになかった。
まわりの大人の趣味の世界が多様だったので、その時々の大人にあわせて私は習い事に励んでいた。
皆絵を描くのは苦手だったのね。
この事が「緑のキリン事件」をおこしたのだった。

幼稚園の時、動物園でおえかきをしていた。
ら、私は黄色と茶色のキリンを見ながら緑のキリンを描いた。
先生に理由を聞かれて、私は堂々と「だってキリンは草を食べたから」と答えた。
そして童謡を歌ったという。それは、北原白秋の
「赤い鳥小鳥 なぜなぜ赤い。赤い実を食べた。
青い鳥小鳥 なぜなぜ青い。青い実を食べた。」
だからキリンは緑なの。とね!
この事件は、私の美術家人生のはじまりだったかもしれない。

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November 12.2020


9 『おせんたくが好きなのね


©️Yoko Yamamoto


作家の三島由紀夫は、母親の産道を通った時の記憶があると言っていた。それから”自分”となったのだという。
私の場合は、このシーンから”わたし”になった。

それは、庭の隅に植えられたいちじくの木の下の水道のある場所だった。
水栓の下には少し大きめの金だらいがあり、色々なものを水洗いする場所。
裁縫の好きな母は、私のパンツを可愛い布で何枚も作っていた。それは私がよくおもらしをするからだった。
おもらしをすると”おしりペンペン”をされていたので、いちじくの木のそばはおそろしい場所だったが、
おこられないようにするために自分でパンツを洗っていちじくの木に干しておく方法を考えついた。
そしておしりは気持ちよく水につけて空を見ていた。
恐怖を回避して満足感にあふれていたその時、”わたし”だと思った!
いちじくの花盛りは、わたしの記憶の第一番目のシーンだった。

洗濯機には、水をしぼるゴムのローラーがついていた。
今の私は鉄のローラーで、銅版画を刷っている。
不思議なイメージの連鎖だ。

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November 05.2020


8 『ありさんのぎょうれつがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


昔、メキシコの美術館で「子供のための展覧会」を見た。
テーマは絵本だったが、展示がおもしろかった。
広くて天井の高い美術館の中に、子供のサイズに縮小した展示室が作られていた。
入り口も廊下も壁面も、子供にはピッタリのサイズ。
だから、彼らが見たい絵は彼らの目線に合っていた。大人は少し腰をかがめて見る。
天井もついていたから私は不思議の国アリスになったように感じた。

たしかに、子供の頃は地面に近い生活をしていた。だから犬とも同類だったのだ。
ありやバッタや石ころや四つ葉のクローバー、そして海では貝殻の美しさにうっとりできたのだった。
その中でも私のお気に入りはありの行列。
どこからどこへゆくのかが知りたくて、ずーっとながめていたことを思い出す。
そのうち行列を作らせたくなって、台所の砂糖壺までの道をつけたら、
いつも台所に立っていたキレイ好きのまさおばあさんは、ひっくりかえった。
エサをあげたのにと不思議な気持ちになった。

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October 29.2020


7 『チューリップがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


庭の真中に母のチューリップ畑があった。
母がとても大事にしていたことは、花が咲くと毎日の手入れを鼻歌まじりでしていた事からもわかっていた。
「さいた さいた チューリップのはなが
ならんだ ならんだ あか しろ きいろ」
風にふわりふわり花をゆらしながら立っているチューリップを見ていると、とてもしあわせな気分になった。
大きくなって、母から、私のはじめての言葉がチューリップを見て
「まあチレイ!」という感動の言葉だったと聞いた時も、しあわせな気分は増幅されたのだったが、
と同時に、どうしてそんなに残酷なことをしたのだろうか。という事件を思い出す。
立派に咲いたチューリップを見ながら、同時に枯れた花を切りとる母の姿も見ていたのだった。
そしてやってしまった。
一番キレイなチューリップの花のところをハサミでチョキチョキ切りとったのだ。
「だって茶色くなるのはかわいそう」というのが私の理由だったが、
チューリップの花のところばかり集めてしまったことを見て、母は言葉もでなかったとか。

2年前に出版した「チューリップ畑をつまさきで」という絵本を描いていた時も、
このエピソードが頭の中に見えかくれしていたことを思い出す。
きっと死ぬまで続く「チューリップとわたし」の関係なのね。

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Posted by: lucas

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October 22.2020


6 『おふろがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


大事件の話です。
おまんじゅう事件のおばあさんはまささんといいます。
キレイ好きなまささんは、おふろがおすきでした。
まずは日本手拭をギュッとかたくしぼり、垢こすりをします。
江戸っ子のまささんの子供の頃からの習慣だったことは後で知り、その健康法に驚きました。
が、痛かったことは憶えています。でも、湯船の中で手拭をつかってあぶくをとじこめる遊びが大好きだったので、
まささんとおふろに入るのが好きでした。しっかりあたたまるまではいっていることが大切だったのでしょう。
湯船にはいろんなものがプカプカ浮いていました。

ある時、気持ちが良くなって湯船でウンチをしてしまったのです。
ウンチもプカリプクリと浮かんでいたそううですが、
おまささんはビックリして早速得意の風呂掃除をしたという事件。
なのですが、この絵本を読んだ子供が、
「おこちゃんのまねをして困っています」という手紙が出版社に届き、
笑い話の手紙の中に本気で怒っている母親からの「このページをカットして下さい!」という
エスカレートした手紙まであって、当時の編集者との相談話は複雑でした。
だって、作者としては、子供に直接私の話が届いた喜びの証となった事件だったからです。
赤ちゃんも満ちたりた気分になった時、お湯の中でウンチをするでしょう。
幸せのバロメータですね、と返事をしました。

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October 15.2020


5 『いけのこいがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


日本庭園で泳ぐ鯉を見ると、今でもこのシーンがよみがえり、少し恐怖をおぼえる。
美しい魚なのにコワイのだ。
父方の祖父は江戸前鮨を大阪に紹介した人として鮨辞典に載っている。
彼は晩年山荘を建てて造園を趣味としていたと母から聞いた。
幼ない私は父母と一緒にそこで暮らしていたとか。妹が生まれる頃の話。
錦鯉を池に泳がせ、エサをあげる。
おじいさんのそばに座っていた私をよろこばせようとヒザに抱き、エサのバケツを持たせたとたん、
エサは池にバサリと落ちてゆき、コイがエイヤッと飛び出してきた。
お口のおおきさにビックリしてひっくりかえったのだけど、
またう〜んとうなって気を失なったので、おじいさんもヒックリかえった話。

予想もつかないビックリは、色とりどりのコイの色と美しい風景と共に今も心に宿っている。
「食べず嫌い」という言葉があるが、私はコイは食べられません。
今も。このおじいさんもいつも和服でした。

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October 08.2020


4 『おまんじゅうがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


父方の祖母登場。
いつも和服を着ているおばあさんはキレイ好きで洗濯、掃除が得意。甘いお菓子が大好きだった。
堺はお茶菓子の名所なので、小豆のこしあんの常用まんじゅうは欠かしたことがなかった。
またこれも不思議な縁だが、堺市に仕事に行くと必ずいただくお土産が「大鏡」という白のこしあんの和菓子で、
私はこれを見たとたんおばあさんの茶卓にワープしたことがあった。
おばあさんはこしあんが好きだったのだ。

なぜ和菓子をこんなに憶えているのだろうか。母に聞くと、母の教育方針がみてとれた。
私達の虫歯予防のために、あんこは御法度だった。という。
チョコレートは常用のお菓子になりがたい時代です。
そんなことをふと忘れたおばあさんは、私の口に白くて小さいおまんじゅうをひとついれてくれた。
はじめて甘いお菓子をたべた私は、おいちいーといってまた気を失ったとか。

後日談の、おぜんざいを友達の家ではじめて食べて母にこう言った。
「お豆のおみそ汁を作って!」と。
おぜんざいの存在も言葉も知らない時代があった。

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Posted by: lucas

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October 01.2020


3 『キューピー人形がすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


いよいよ家族の登場。
私と妹は堺市大浜海岸のそばで育った。
大家族で、親戚がよく集まり、大人達に囲まれて私はともかくおしゃべりで、妹は無口だった。
まずは母方の祖父。奈良に住んでいた彼は洋行帰りのダンディーなおじいさん。
夏の麻のスーツとハット姿が似合っていた。
おばあさんとは蓄音器をかけてダンスを踊っていたと、母から聞かされていた。

2歳の頃、昼寝をしている時に、お土産のキューピー人形を小さいのから一番大きいのまで7個買ってきて、
私が目を覚ますのを待っていたエピソードは有名。
キューピー人形を抱いてねていたら、起きるとたくさんのキューピー人形に囲まれていたので
びっくりしてう〜んと気を失なったとか。
私のはじめてのビックリヒックリかえったお話。

そういえば、はじめて美術館に連れていってくれたのも彼だった。
そして、京都市立美大の門前の画材屋でスケッチブックと絵の具を買ってきてくれた。
美大への道をつけてくれたのかしら。

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Posted by: lucas

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September 24.2020


2 『こいぬがすきなのね。』


©️Yoko Yamamoto


白黒写真のアルバムには、堺市の大浜海岸で遊ぶ姿が、毎年貼られている。
海と砂場、ここで手に入れるモノは大切な宝物だった。
現在は埋め立てられて、海岸は遊泳場ではなくなった。
今の私は毎年、堺市の依頼で中学生のアートクラブグランプリという
アート作品の審査員としてこの場所に通っている。
この仕事が海浜工業地帯に眠っている子供の頃の記憶を思い出す機会になっているので、
巡り合わせた時間に不思議な思いを抱く。

私にはマーコという妹がいるが、
今は消えさった海の近くの南海野球場の話が出来る少ない話し相手だ。
その球場は、子犬の捨て場所でもあった。
私の遊び相手はスピッツのゴロー。生まれた時からの世話役だった。
夕方、ゴローと海から帰る時、ワンピースのすそを広げて子犬をひろって帰っては、
家族に問題を運んでいた。

絵本の絵を見ると白いスピッツのゴローは、今、横にいる、
ラブラドールのルカにそっくりで、びっくりひっくりかえった。

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Posted by: lucas
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