『揺籠(ゆりかご)のうた』1999年 ソフトグランド・エッチング、グワッシュ / 紙 20×16cm  ©️Yoko Yamamoto


Artist's Notes:
北原白秋が書いた詞には、「カナリヤが歌うよ」に始まって、「枇杷(びわ)の実が揺れるよ」「木ねずみ(リスのこと)が揺するよ」、そして「黄色い月がかかるよ」と、一貫して黄色(※左)の情景が綴られている。だからこの歌を歌っていると、私の中にも黄色のもつやさしいイメージが広がってゆく。自然に画面にもさまざまな黄色があふれることになった。音符は枇杷の実である。揺籠に横たわった子どもは、黄色い色に守られて、あるいは照らされて、ゆらゆら揺すられながら、寝たり、起きたり(※右)。その姿の移り変わりから、時間の経過も表現してみた。

   


1952年8月15日と日付のある白黒写真。 浴衣姿の祖父が紐を持って畳に座っている。
紐の先には竹で作られた揺籠があり、生後4ヶ月の私が寝ている。
祖父は揺籠を揺らしながら私をあやしてくれていたとか。
写真の下には母のメモ。

おじいちゃま、容子のお守り。
(お船はぎっちらこ ギッチギッチこげば えべすか だいこくか こちゃ 福の神)
と歌っています。

えべすは恵比寿様。だいこくは大黒様。 七福神に囲まれて眠る私が福の神だなんて。
ありがたい子守歌を聴いて育ったのでした。
この子守歌のメロディーは思い出せないので、母に写真を見ながら歌ってもらったことがあった。
ギッチギッチのところが木製の船と櫓の擦れ合う音を表現している。
宝船にも時代を感じてほっこりする。



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