『待ちぼうけ』1999年 ソフトグランド・エッチング、グワッシュ / 紙 20×16cm  ©️Yoko Yamamoto


Artist's Notes:
ここでは、ぜひ兎の動きを連続で見ていただきたい。初めの♪まちぼうけ まちぼうけ…… で、兎はうっかり飛んで出てきたばかりに「ころりころげた木のねっこ」だった。ところが、2度目の♪まちぼうけ まちぼうけ…… では、兎はもう学習していて、ぶつかるのがわかっているから、ぶつかると見せかけて、余裕で寝転んでウインクしたり、いくら少女が♪うさぎぶつかれ木のねっこ と見ていても、ねっこの上にひょいと乗っかったり。歌詞から兎を賢い存在としてとらえ直し、絵にしたもの。音符のところどころに「荒野の箒草」のような枯葉がついている。



今回「待ちぼうけ」で思い出したシーンは駅の改札口。
鎌倉駅には、伝言板があった。それも黒板とチョークの。
約40年前、鎌倉の海のそばにアトリエがあった。雨漏りのするボロ屋。
来客が多くて軽自動車で送迎をしていた。

人を待つ間、黒板の他人の待ちぼうけのボヤきを読むのが好きだった。悪趣味だけど。
本物のきどったのや、怒ったのや、愛ある言葉や別れの言葉が
本人の署名入りだったのが、今となっては信じられない。
私は改札口を気にしながら、書きたくて、でも書くことがなくて恨めしかった。
そんな伝言板を読み、立ち去る人のことも覚えている。立ち去ることもしたかったなあ。


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