『レストラン「ル ゴロワ」のレシピから 季節のごはんと暮らし方』という待望の本が誕生しました。



 

1997年、「ル ゴロワ」というフレンチレストランが、表参道の裏通りに開店した時からお世話になっていました。徒歩百歩くらいの場所にアトリエを借りている時期で、私の犬のルーカスが、散歩の時マダムに水をもらったり、夕食時にはスープをとった後の牛の骨をシェフからいただいたり、もちろん私の胃袋のお世話もしてもらっていました。ご近所つきあいがはじまったのです。
13坪の小さなレストランには、カウンター12席、窓側にテーブル一卓がありました。いつも満席の「パリのごはん屋さん」のように、常連で大賑わいの旨い店。店に入るとマダムの敬子さんの笑顔で出迎えをうけ、カウンターの中からは忙しいシェフが鍋をいくつも動かしながらペコンとおじぎをしてくれました。はじめてカウンターの隅に座った時、右横の壁にペンのキズを見つけた私は、そのペンの続きが描きたくなって犬のルーカスの落書きをしたのが、お二人と親しくなるきっかけでした。
犬のルーカスを連れてシェフの「特製ル ゴロワ風サラダ」をワインと共に注文し、パティシエでもあるマダムの「グレープフルーツプリン」で締める日常飯の、胃袋も心もあたたまる夕食は疲れをふきとばしてくれたのでした。

思い出がありすぎるので、続きはまた書かせて下さい。

山本容子


『レストラン「ル ゴロワ」のレシピから 季節のごはんと暮らし方』
朝日新聞出版  1,500円(税別)


▶ ル・ゴロワ フラノ