アート・イン・ホスピタル ーステンドグラスの癒しの光ー

埼玉県立小児医療センター 霊安室≪Angel's room ≫

霊安室「星めぐりの歌」

霊安室は、嘆きや悲しみに満ちた空間ですが、同時に生を終えた魂に「安らかであれ」と願い祈る場所でもあります。それが地下ではなく、天空に近いこの部屋ではステンドグラスで描かれた壁画が、窓から射し込む光により床や壁に投影されます。その自然の力で動く絵画は、時の移ろいを伝えてくれることでしょう。この霊安室は、祈りを捧げる人々が、太陽、月、星と一体化することで、時間をかけて癒されていく「星めぐりの歌」のような場所であってほしいと願います。    山本 容子

2016年10月、工房の職人が一面一面、細心の注意を払って設置。透明感のある深い青が印象的なステンドグラスは、柱を避けるため、画面は5分割となっている。(撮影:荒木大甫)

縦2160×横480㎜×5点(壁を含む全長縦20160×─5280㎜)

2015年4月銅版画の原画完成

2015年4月原画のイメージに合う色調のガラスを工房のベテラン職人(山木育人氏)と入念に色合わせ

2015年5月ステンドグラス鉛線の入れ方を確定

2016年『クレアーレ』湯河原あたみ工房にて描写制作開始

鎮静効果のある「青」を多数用いて、イメージとおりの色の混ざりあいと透過した

美しいガラスを前に絵付け作業開始

※ガラスはほぼすべてが、ドイツの職人によるハンドメイド

ガラスの切り出しが完了したら、原画の図面どおりにガラスを並べる

練ゴムで留めたガラスをライトテーブルに置く

原画図面の描線を見ながら絵付けの技法を考える(中野竜志氏)

5面すべての絵付け作業を3日がかりで行う

いよいよ黒の絵具「グリザイユ」で絵付け、ステインを始める

<ステインする=汚す>からステンドグラスと言う

「グリザイユ」の主成分は酸化鉄。鉄の粉が入っている顔料は中世から使われている

ガラスの美しさがどんどん絵心を刺激し、作業スピードも大幅アップ

グリザイユ絵具は乾いても定着しておらず、筆で簡単に払える。これを高温で

焼き付けるとガラスと一体化する

グリザイユを焼きつけたあとに、夜空の星の表現のため、色ガラスを部分的に削って白くする

「サンドブラスト」や、焼き付けると黄色くなる絵具「シルバーステイン」を加飾

テーマは宮澤賢治の童話『星めぐりの歌』。夜空の星座を縫うように歌詞が流れていく。

窓を囲む内壁に広がりをもたせる〝工夫”によってガラスの色が室内まで軽やかににじみ出し、

窓からの光がツヤのある床や、天井にも広がる安らぎの空間が完成

新病院での霊安室の重要性を主張した看護部のお二人や、医療センターの皆様。ガラス選びの段階から

ステンドグラス設置まで取りまとめてくれた職人さんとともに